食器(やきもの)は生き物です。
っていうと、「はぁ?」という声が聞こえてきそうですが。
本当です。
特に陶器に対してよく「器が育つ」と言います。
これは精神的に使っているうちに愛着がわくという意味とは少し違っていて、器はその使い手の使い方で、その趣(様子)が変わってきます。
おそらく同じ器を違う人が同時に使い始めて、半年後などに比較すると全く違う器に見えるといったらイメージできるでしょうか。
なにがそんなに違ってくるかというと、色味が一番違ってきます。また、独特の艶が出てきたりします。
反対に買いたてのやたらテカっとしていた趣がしっとりしてきたり。
さらに貫入(かんにゅう)という、陶器の釉薬の隙間を這うように入る、表面のヒビのようなもの。
汚れと嫌う人もいますが、これが陶器独特の表情です。
この貫入の入り方ひとつで、器の表情はまったく違ってきます。
それゆえ、陶器は育つのです。
まさしく、生き物ですよね。
お気に入りの器を買ったら、自分の手で他にはない自分だけの器に育てていきませんか。
私はそれが楽しくて、磁器より陶器が好きです。
自分の手で育てていけば、きっと長く飽くことなく付き合える逸品になるはずです。
そんなに難しく面倒なことはないです。
ほんの少しの心がけがやきものを長持ちさせ、さらに魅力的にします。
では、その「ほんの少しの心がけ」とは?
ひょうしぬけするほど簡単なことです。
まずはスタート地点 買ってきたらすぐやること
高台(器の底)のざらつきをとるため、器の高台同士をこすり合わせたり、やすりをかけるなどしてざらつきをとりましょう。テーブルを傷つきを防ぎます。
ランチョンマットやテーブルクロスを使用する方は気にしなくてもOKです!
また、プチプチなどの緩衝材はすぐ外しましょう。カビる原因になります。
急須の口についているビニールも外します。そのままの使用は雑菌の繁殖の原因にもなるので、避けましょう。
ココが肝心! 使う前のひと手間
陶器は固いスポンジと思ってください。
乾いた状態で、調理した汁ものや臭いのきついものを入れると、色も臭いもすべて吸収してしまいます。
使う前には必ず水をふくませます。
水につける時間は30分~1時間という説もありますが、私は時間のある時やあらかじめ使う器が決まっているときは調理時間に水に浸しておきます。10~15分くらいですね。
では時間のないときは?
蛇口から水をだし、十分いきわたらせるように1分ほど流しがけします。
置いておいても水分はすぐになくならないので、それでも十分です。
(少なくてもそれで食器をダメにしたことはありません。)
また、これは磁器でも注意なのですが、高台が白いものはあらかじめ水を含ませてから使用しないと、だんだんと黒ずんできます。この汚れは一旦ついてしまうと落ちないので、注意したいですね。
焼き締めの器に揚げものを盛るとき
キッチンペーパーなどに油をふくませ、器の表面を拭きます。
油のコーティングをすることで、揚げものから出た油の吸収を抑えることができます。
洗い方・乾かし方
基本、陶器は手洗いしましょう。食洗器でも洗えることはありますが、乾燥の際に生地の中の空気が膨張し、破裂する危険があります。自己責任で。
さて、手洗いのときは軟らかいスポンジに中性洗剤をつけて洗います。
乾燥するときは布巾で水気をとり、十分乾燥させてから食器棚にもどします。
もし余裕があるなら洗ったあとに熱湯をかけると渇きが早くなります。
拭いただけだと、器の中のほうに水分を含んだままなので、カビの原因となります。
私は水きりかごである程度水気を切って、その後かごに移動させて乾燥させます。
重ねすぎに注意! しまい方
重ねすぎると、くずれたり、上の器の重さで下の器が傷ついたりします。
なるべく同じ種類以外のものは重ねないようにしましょう。
といっても難しいですよね。
重ねる場合は、できれば器と器の間に和紙などを挟めればいいですね。
スチロールやビニールなどのクッション材は通気性が悪く、カビの原因となるので不向きです。
高価な食器だからといって、箱にしまうのもいいですが、その保管場所に気をつけないとやはりカビてしまいます。
私は食器棚にわりと多く食器が入っているのですが、焼き締めの器をカビさせてしまいました。
それから食器棚の天板にはカビ防止シートを引き、除湿剤を棚の奥に設置するようにしました。
その後、再びカビは発生していないので、効果はあったと思います。
気をつけていたけどカビさせてしまった!
ありますよね。私もふくめて。
陶器の場合、鍋にお湯を入れて火にかけ、煮沸します。
ただ、強火でグツグツやると、破裂する可能性があるので、弱火でコトコトしましょう。
磁器の場合、それでもカビの黒ずみはとれないので、うすーい漂泊剤につけましょう。
強いものにつけると漂白剤の臭いがしみます。
食器は楽しむ
茶渋などは重層や漂白剤をうまく活用すれば、そんなに汚れが気になることはありません。
前にも記載したとおり、器は買った当初のまま保存するものでなく、そこから新たな付加価値をつけていくのが醍醐味です。
自分の手で自分仕様の器を育てて行ってください。